食品中の放射能規制厳格化はどのように検討されるのか
10月27日に食品安全委員会が、食品の健康影響評価として、「(通常自然界から受けている被曝の加えて)追加的なひばくを食品のみから受けたことを前提に生涯における追加の線量(実効線量)を累積で100ミリシーベルトに抑えれば、健康への影響は出ない」という評価を出した。
その翌日、小宮山厚生労働大臣及び厚生労働省の事務方が、閣議後の記者会見で、1.食品中に含まれる放射性セシウムからのひばくを年間1ミリシーベルトに抑える。2.新たな規制の実施は来年の4月から。3.規制が厳格化されることになるので、新規制実施時点で流通していたものは現在の暫定規制値を適用するという経過措置を設ける。といった方向性を打ち出した。今後はこの方向性で議論が進んで新たな規制が適用れることになると思われるので、食品中の放射性物質の規制に関心のある方は、是非この厚生生労働大臣の記者会見発言を自分で読んでおいていただきたい。ここで大臣が発言している方向性は厚生労働省の内部で検討されたものであり、その検討経緯や基準の根拠はこの大臣発言以上の内容はどこにも示されていないし、今後もこれ以上「年間1ミリシーベルト」の基準や根拠はは示されることも無いと推測される。
\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
・小宮山大臣閣議後記者会見概要
(H23.10.28(金)
http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/2r9852000001tghx.html
発言概要の主な内容
1.4月施行後の一定の経過措置について
既に流通しているものについては、今の暫定規制値を適用。4月施行以降に作られた食品は、直ちに新しい規制値を適用。
2.子どもへの配慮について
全体に、1ミリシーベルトというのはこどもへの安心を配慮した数字。食品に大人用の規制値と子供用の規制値を設けること非現実的。子どもだけが食べる乳幼児の食品についてさらに厳しいものとするかどうか審議会で検討。
3.年間1ミリシーベルトに制限する対象の放射性核種について
食品中の放射性セシウムからの内部ひばくを年間1ミリシーベルトに抑える。それ以外のストロンチウム等の放射性核種は、別途検討。
4.お茶、乾燥シイタケの扱いについて
口に入れるものと乾燥させて流通しているものとでは放射性物質の濃度が大きくことなるお茶、乾燥シイタケの取り扱いについては、特別に検討する。
5.現実の汚染状況との勘案について
現実の汚染状況を勘案して、規制値に例外を設けることはしない。
6.厳格化により出荷できなくなった農林水産物の補償について
厳格化された規制値にひっかかって出荷できなくなった農林水産物に対する補償については、政府としてしっかり対応する。
$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$
食品安全基本法上の仕組みからすれば、食品安全委員会の食品安全評価を踏まえて、厚生労働省が厚生労働省の審議会で規制値を検討するということになっているはずだが、厚生労働省は審議会の検討を踏まえずに、食品に含まれている放射性セシウムからのひばくを年間1ミリシーベルトに抑えるという結論をいきなり出してしまっている。政治家である厚生労働大臣が「値ごろ感」で規制値を決めているという印象を受ける、これれは再三再四繰り返されてきた民主党の政治家たちの検討違いの「政治主導」の一つではないかという疑いをぬぐうことはできない。
しかし、それよりもひどいのは、食品安全委員会の「寝返り」と言っても良いほどの評価の変更である。
それは評価書自体の本文に全く表れていないのだが、それに付随して公表されたQ&Aに端的に表れている。
食品安全委員会は7月29日~8月27日の間に評価書(案)をパブリックコメントにかけていたとき、付随するQ&Aで以下の通り、「外部ひばくと内部ひばくを合わせて生涯累積線量を100ミリシーベルトにおさえるべき」だと明言していた。このQ&Aはホームページにはもう残っていないのだが、私は運よくこれをパソコンに保存していたので、以下該当の文面を紹介する。
\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
・放射性物質を含む食品による健康影響に関するQ&A
(パブリックコメント7月29日~8月27日用)
問4(抜粋)
3 評価(案)としては、あくまで食品の健康影響評価として、追加的なひばくを食品のみから受けたことを前提に、生涯における追加の線量(実効線量)として示しています(評価(案)の概要は問2参照)が、結果として、この値については、外部ひばくを含めた線量として捉えることも可能と考えらえれます。
$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$
パブリックコメントにかけられた評価書(案)は、パブリックコメントの意見を検証した結果をふまえても修正する必要性のある箇所は無いと食品安全委員会が判断し、そのまま全く修正を加えずに、厚生労働省に通知された。
しかし、これに付随するQ&Aの方では、「生涯累積線量を100ミリシーベルトは食品からの内部ひばくだけを考えた数値であって、外部ひばくは別に考えなければいけない」とまるで正反対の説明を行っている。
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*放射性物質の食品健康影響評価について
「食品中に含まれる放射性物質の食品健康影響評価」
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka.html
・放射性物質を含む食品による健康影響に関するQ&A
10月27日食品安全委員会公表
問4
3 評価としては、あくまで食品の健康影響評価として、追加的な被ばくを食品のみから受けたことを前提に、生涯における追加の累積線量(実効線量)として示しています(評価の概要は問2参照)。これは、外部被ばく自体の評価を行ったものではありませんし、外部被ばくと内部ひばくの合計についての判断を示したものでもありません。
$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$
この態度は明らかに非科学的な行為である。最初の説明と後の説明が正反対なのだから、どちらかが間違いでどちらかが正解であるはずである。毎日新聞の記事などによると、食品安全委員会の委員長は説明ぶりが変わったことについて「以前は誤解を招いた説明をしていた。説明不足だった」と言っているようであるが、正反対の説明をしていることについて「説明不足」という理由は科学的に成り立たない。食品安全委員会は「科学的に検討する」ということを放棄したようである。
これまで食品安全委員会は、BSE問題において科学的な判断を行ったことに対して、民主党から政治的に問題だと言われ無き批判を浴びており、いわばおろかな政治家の犠牲になった気の毒な存在であった。しかし、その当人たちが、科学的な説明を放棄してしまったのでは、食品安全委員会の存在の意義を失ってしまったということになるだろう。
食品安全委員会の「評価書」等の資料は、これから我々が放射能の問題を考えるときに用いることができる非常に貴重な応報を含んでいる。
しかし、一方で、食品安全委員会の食品の安全性に関する判断はこれからはもう信用できなくなったと言っていいだろう。
その翌日、小宮山厚生労働大臣及び厚生労働省の事務方が、閣議後の記者会見で、1.食品中に含まれる放射性セシウムからのひばくを年間1ミリシーベルトに抑える。2.新たな規制の実施は来年の4月から。3.規制が厳格化されることになるので、新規制実施時点で流通していたものは現在の暫定規制値を適用するという経過措置を設ける。といった方向性を打ち出した。今後はこの方向性で議論が進んで新たな規制が適用れることになると思われるので、食品中の放射性物質の規制に関心のある方は、是非この厚生生労働大臣の記者会見発言を自分で読んでおいていただきたい。ここで大臣が発言している方向性は厚生労働省の内部で検討されたものであり、その検討経緯や基準の根拠はこの大臣発言以上の内容はどこにも示されていないし、今後もこれ以上「年間1ミリシーベルト」の基準や根拠はは示されることも無いと推測される。
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・小宮山大臣閣議後記者会見概要
(H23.10.28(金)
http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/2r9852000001tghx.html
発言概要の主な内容
1.4月施行後の一定の経過措置について
既に流通しているものについては、今の暫定規制値を適用。4月施行以降に作られた食品は、直ちに新しい規制値を適用。
2.子どもへの配慮について
全体に、1ミリシーベルトというのはこどもへの安心を配慮した数字。食品に大人用の規制値と子供用の規制値を設けること非現実的。子どもだけが食べる乳幼児の食品についてさらに厳しいものとするかどうか審議会で検討。
3.年間1ミリシーベルトに制限する対象の放射性核種について
食品中の放射性セシウムからの内部ひばくを年間1ミリシーベルトに抑える。それ以外のストロンチウム等の放射性核種は、別途検討。
4.お茶、乾燥シイタケの扱いについて
口に入れるものと乾燥させて流通しているものとでは放射性物質の濃度が大きくことなるお茶、乾燥シイタケの取り扱いについては、特別に検討する。
5.現実の汚染状況との勘案について
現実の汚染状況を勘案して、規制値に例外を設けることはしない。
6.厳格化により出荷できなくなった農林水産物の補償について
厳格化された規制値にひっかかって出荷できなくなった農林水産物に対する補償については、政府としてしっかり対応する。
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食品安全基本法上の仕組みからすれば、食品安全委員会の食品安全評価を踏まえて、厚生労働省が厚生労働省の審議会で規制値を検討するということになっているはずだが、厚生労働省は審議会の検討を踏まえずに、食品に含まれている放射性セシウムからのひばくを年間1ミリシーベルトに抑えるという結論をいきなり出してしまっている。政治家である厚生労働大臣が「値ごろ感」で規制値を決めているという印象を受ける、これれは再三再四繰り返されてきた民主党の政治家たちの検討違いの「政治主導」の一つではないかという疑いをぬぐうことはできない。
しかし、それよりもひどいのは、食品安全委員会の「寝返り」と言っても良いほどの評価の変更である。
それは評価書自体の本文に全く表れていないのだが、それに付随して公表されたQ&Aに端的に表れている。
食品安全委員会は7月29日~8月27日の間に評価書(案)をパブリックコメントにかけていたとき、付随するQ&Aで以下の通り、「外部ひばくと内部ひばくを合わせて生涯累積線量を100ミリシーベルトにおさえるべき」だと明言していた。このQ&Aはホームページにはもう残っていないのだが、私は運よくこれをパソコンに保存していたので、以下該当の文面を紹介する。
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・放射性物質を含む食品による健康影響に関するQ&A
(パブリックコメント7月29日~8月27日用)
問4(抜粋)
3 評価(案)としては、あくまで食品の健康影響評価として、追加的なひばくを食品のみから受けたことを前提に、生涯における追加の線量(実効線量)として示しています(評価(案)の概要は問2参照)が、結果として、この値については、外部ひばくを含めた線量として捉えることも可能と考えらえれます。
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パブリックコメントにかけられた評価書(案)は、パブリックコメントの意見を検証した結果をふまえても修正する必要性のある箇所は無いと食品安全委員会が判断し、そのまま全く修正を加えずに、厚生労働省に通知された。
しかし、これに付随するQ&Aの方では、「生涯累積線量を100ミリシーベルトは食品からの内部ひばくだけを考えた数値であって、外部ひばくは別に考えなければいけない」とまるで正反対の説明を行っている。
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*放射性物質の食品健康影響評価について
「食品中に含まれる放射性物質の食品健康影響評価」
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka.html
・放射性物質を含む食品による健康影響に関するQ&A
10月27日食品安全委員会公表
問4
3 評価としては、あくまで食品の健康影響評価として、追加的な被ばくを食品のみから受けたことを前提に、生涯における追加の累積線量(実効線量)として示しています(評価の概要は問2参照)。これは、外部被ばく自体の評価を行ったものではありませんし、外部被ばくと内部ひばくの合計についての判断を示したものでもありません。
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この態度は明らかに非科学的な行為である。最初の説明と後の説明が正反対なのだから、どちらかが間違いでどちらかが正解であるはずである。毎日新聞の記事などによると、食品安全委員会の委員長は説明ぶりが変わったことについて「以前は誤解を招いた説明をしていた。説明不足だった」と言っているようであるが、正反対の説明をしていることについて「説明不足」という理由は科学的に成り立たない。食品安全委員会は「科学的に検討する」ということを放棄したようである。
これまで食品安全委員会は、BSE問題において科学的な判断を行ったことに対して、民主党から政治的に問題だと言われ無き批判を浴びており、いわばおろかな政治家の犠牲になった気の毒な存在であった。しかし、その当人たちが、科学的な説明を放棄してしまったのでは、食品安全委員会の存在の意義を失ってしまったということになるだろう。
食品安全委員会の「評価書」等の資料は、これから我々が放射能の問題を考えるときに用いることができる非常に貴重な応報を含んでいる。
しかし、一方で、食品安全委員会の食品の安全性に関する判断はこれからはもう信用できなくなったと言っていいだろう。
by touten2010
| 2011-11-06 22:46
| 食品基準値
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