放射能に向き合う日々

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原木シイタケは東日本で作れなくなる?

食品に含まれる放射性物質の新基準値を5分の1に厳格化する案について、厚生労働省が意見募集を行っているが、その関係で農林水産物関係資材(飼料・堆肥等)に含まれる放射性物質の基準値はどう変わってくるのだろうか。

農林水産省は農林水産物関係資材に含まれる放射性セシウムの基準値として、私が知る限りでもざっと以下の通り多くの基準を定めている。

・平成23年産稲から生じるもみがらのくん炭の取扱いについて 平成24年1月27日
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/kokumotu/120127.html
玄米の放射性セシウム濃度に濃度比10を乗じて、もみがらのくん炭の放射性セシウム濃度を算出し、算出したもみがらのくん炭の放射性セシウム濃度が、土壌改良資材の暫定許容値(400 Bq/kg)以下の場合は、もみがらのくん炭を土壌改良資材に利用できる。

・調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値の設定について 平成23年11月2日
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/111102.html
放射性セシウムの濃度の最大値
(1)薪 40ベクレル/kg(乾重量)
(2)木炭 280ベクレル/kg(乾重量)
薪及び木炭から食品への移動についてはわずかだが、焼却灰には一定レベルの放射性物質が残留するため、焼却灰が一般廃棄物最終処分場での埋めたて処分が可能な放射性物質の濃度8,000Bq/kg以下となるよう設定。

・きのこ原木及び菌床用培地の当面の指標値の設定について 平成23年10月6日
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/111006.html
放射性セシウムの濃度の最大値
(1)きのこ原木 150ベクレル/kg(乾重量)
(2)菌床用培地(おが粉等に栄養材として米ぬか等を加えたもの) 150ベクレル/kg(乾重量)
原木等から生産されるきのこの放射性物質濃度が食品衛生法の暫定規制値(500Bq/kg)を下回るよう、移行係数を3とし、更に安全側に立ち、指標値150ベクレル/kgを設定

・平成23年産稲から生じるもみがら及び稲わらの取扱いについて 平成23年9月30日
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/kokumotu/110930.html
玄米の放射性セシウム濃度に濃度比3を乗じて、もみがらの放射性セシウム濃度を算出し、算出したもみがらのくん炭の放射性セシウム濃度が、土壌改良資材の暫定許容値(400 Bq/kg)以下の場合は、もみがらのくん炭を土壌改良資材に利用できる。

・放射性セシウムを含む肥料・土壌改良資材・培土及び飼料の暫定許容値の設定について 平成23年8月1日
http://www.maff.go.jp/j/syouan/soumu/saigai/shizai.html
(1)肥料・土壌改良資材・培土中含まれることが許容される最大値は、400ベクレル/kg(製品重量)
(肥料等を長期間施用しても、原発事故前の農地土壌の放射性セシウム濃度の範囲に収まる水準。この水準であれば、農地への施用作業時の外部被曝が廃棄物再利用のクリアランスレベル(10マイクロSv/年。平成23年6月3日原子力安全委員会決定)を下回る。)
(2)牛、馬、豚、家きん等用飼料中に含まれることが許容される最大値300ベクレル/kg(粗飼料は水分含有量8割ベース、その他飼料は製品重量)
(飼料から畜産物への移行係数、食品中の暫定規制値(放射性セシウムについては、乳200ベクレル/kg、肉500ベクレル/kg)及び飼料の給与量から算出。)
(3)養殖魚用飼料中に含まれることが許容される最大値は100ベクレル/kg(製品重量)
(飼料から水産物への移行係数、食品中の暫定規制値(放射性セシウムについては、魚500ベクレル/kg)及び飼料の給与量から算出。)

「汚泥肥料中に含まれる放射性セシウムの取扱いについて」(消費・安全局長通知)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_hiryo/caesium/pdf/20110624_23shouan_1893.pdf
原則
原料汚泥中の放射性セシウム濃度が200 ベクレル/kg以下の場合については、汚泥肥料の原料として使用できる。
特例措置
原料汚泥の放射性セシウム濃度が施用する農地土壌以下であり、かつ、1,000 ベクレル/kg以下であれば、汚泥肥料の原料として使用できる。
→原発事故以前の土壌の放射性セシウム濃度の最大値は約140 Bq/kgであり、汚泥が200 Bq/kgという基準を満たせば、その汚泥を肥料として利用し続けた場合でも、過去の農地土壌の放射性セシウム濃度の範囲(100 Bq/kg(事故前の最大値を切り下げた値)以下)に収まることから200に設定
汚泥肥料に関する基礎知識とQ&A(一般向け)
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/odei_qa.html

これらの基準値については、食品に含まれる放射性セシウムの基準値が5分の1に厳格化されることによって、どのように変更を求められるのだろうか?

肥料関係については、「原発事故前の土壌汚染度を上まわらないように」という考え方で原発事故前の土壌汚染度(放射性セシウム濃度)を元に基準値を定めているので、食品中の基準値が変更されても変更に必要性はない。

食品に含まれる放射性セシウムの食品衛生法上の現行基準値を積算の元として用いているものは意外に少なく、「飼料(養殖魚用含む)」と「きのこ原木及び菌床用培地」のみである。

農水省通知からは、計算式が解らないので確かなことは言えないが、飼料については、現在最大値300ベクレル/kgとなっているものを、5分の1の60ベクレル/kgまで厳格化することが求められると予測される。

以下のホームページを見てもらえばわかるが、牧草については、岩手、宮城、栃木、群馬といった東北・北関東において、最新のデータでも60Bq/kgを上まわっているものがかなりあり、来年度はこうした牧草を牛に与えることができなくなることから、畜産農家は牧草は輸入したものを使わなければならなくなり、経営上かなりの負担が課せられることになるだろう。

牧草の放射性物質の調査結果 岩手県
http://ftp.www.pref.iwate.jp/list.rbz?nd=4399&ik=3&pnp=64&pnp=588&pnp=4399

牧草等の放射性物質について 宮城県
http://www.pref.miyagi.jp/tikusanka/0401-bokusou_housyanou.html

牧草の放射性物質モニタリング検査結果及び給与等の可否(第21報)栃木県
http://www.pref.tochigi.lg.jp/kinkyu/documents/bokusou-kekka0902.pdf

【1月16日】平成23年産の牧草を原料とする乾草及びサイレージの放射性物質濃度抽出調査の結果について(畜産課)群馬県
http://www.pref.gunma.jp/houdou/f3000094.html

牧草等のモニタリング検査結果について 群馬県
http://www.pref.gunma.jp/05/f2900017.html

「きのこ原木及び菌床用培地」については、現行150Bq/kgの五分の一ということになると、30Bq/kg以下にしなければいけないということになる。

きのこ原木の放射能汚染度について林野庁がとりまとめた以下のホームページを見ていただきたい。宮城県はいわずもがな、山梨県や長野県といった県のきのこ原木まで、30Bq/kgを上まわるものがかなりの確率で含まれている。

きのこ原木等の放射性物質の検査結果について 林野庁
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/kensakekka.html

宮城県の『きのこ原木』の放射能モニタリング結果について 宮城県記者発表資料 平成23年11月30日
http://www.pref.miyagi.jp/ringyo-sk/tokuyourinnsan/housyanou/kinokogenboku.pdf

宮城県の『きのこ原木』の放射能モニタリング結果について(第2回)宮城県記者発表資料 平成23 年12 月28 日
http://www.pref.miyagi.jp/ringyo-sk/kinokogenboku2.pdf

東日本ではかなりの広範囲において原木しいたけが作れないといった事態になってしまうのではないか?

また、多くの県が農林水産物の放射能検査を検出下限値で50Bq/kgで実施している中で、その下限値より低い30Bq/kgになってしまうため、そこまでの精密な測定どうやて行うのかといったことまで問題になってくる。

消費者も生産者もこうした事態を良く知っておいて、その上で、新基準値に対して、自らの意見を厚生労働省にぶつけてもらいたい。パブリックコメントの締め切りは2月4日である。

乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(食品中の放射性物質に係る基準値の設定)(案)等に関する御意見の募集について 厚生労働省
意見・情報受付開始日 2012年01月06日 意見・情報受付締切日 2012年02月04日 (必着)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495110333
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by touten2010 | 2012-01-31 22:52 | 食品基準値 | Comments(0)

誰がひばく線量を全体でどこまでにおさえるべきか考えるのか

厚生労働省が食品に含まれる放射性物質についての新基準値案について、意見募集を行っていることを前回取り上げたが、この新基準値案とは外部ひばくを考慮して作成されたものであろうか。

結論から言うと「何も考えられていない」のである。

以下の放射線審議会の議事録をご覧いただきたい。

・放射線審議会(第121回) 平成23年12月27日
 議事録
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/gijiroku/1315028.htm

(抜粋)
【小松委員】  その一方で、この他に外部被ばく線量があり、食品の摂取との兼ね合いはどうなるのか。被ばく者にしてみたら、食品による内部被ばく、汚染地域からの外部被ばくと分けているとは思えないが、どのように整合性をとっているのか。

【森口(厚生労働省)】  これは食品衛生法の規制値であり内部被ばくのことにしか言及できない。外部被ばく、内部被ばくを合算することが放射線防護上は重要であるものと理解しているし、放射線審議会もそこが一番の課題であるように思う。
 それについては、内閣官房に放射性物質汚染対策室が設置されており、そこが全体のハンドリングをするような政府の仕組みになっていると承知している。当該対策室に、食品の規制値をこの程度まで低くしたいと言った情報を入れており、そこで外部被ばくと内部被ばくを合わせてどれだけの規制にするかについて統括していただいていると思う。
 実際には、低線量被ばくワーキングが報告した20mSv/年に対して、食品からの被ばく量は、福島であっても20マイクロシーベルト程度というマーケットバスケット調査の結果がでている。被ばく線量を大きく下げられる部分は外部被ばくの部分かと認識している。

【小松委員】  全ての被ばく経路を考慮し、住民の被ばく線量をどうしようとかいった議論の場はどこかで設けられるのか。

【森口(厚生労働省)】  それは、内閣官房の放射性物質汚染対策室と、その下の顧問会議であり、各省庁からの情報を統合して判断されていく形になると思う。

【森口(厚生労働省)】の発言によれば、こちらとしては内閣官房放射性物質汚染対策室に情報を入れているので、「外部被ばくと内部被ばくを合わせてどれだけの規制にするかについて統括していただいていると思う。」ということであるがこれは「内閣官房でたぶん考えているんじゃないでしょうか。そういう仕組みになっている筈なので」という話であり、厚生労働省の担当官もその検討状況を把握していないということを示している。

厚生労働省の担当官が把握していないくらいであるから、何も検討がなされていないのは確実である。検討がされているのであれば、厚生労働省を呼んで「これはやっぱりこの程度にしてくださいよ」とか議論をしたり厚生労働省から「この基準値で大丈夫ですよね」と確認したりしている筈であり、「仕組みになっていると承知している」とか「統括していただいていると思う」といった自信なさげな説明にはならないはずである。

以前食品安全委員会が内部ひばくと外部ひばくを併せてどうするかについての検討を放棄したことは私のブログで取り上げたが、内部ひばくと外部ひばくを併せてどうするかについては【森口(厚生労働省)】もここで「外部被ばく、内部被ばくを合算することが放射線防護上は重要であるものと理解している」と述べている通り、政府の中で非常に重要な問題であると誰もが認識しているが誰も手をつけようとしていない問題なのだ。

放射線審議会も汚染地域の除染目標である「その地域等における放射線量が一時間当たり〇.二三マイクロシーベルト未満であること。」という基準について、第118回審議会以降議論をし実際上の外部ひばくの基準について議論しているにもかかわらず、ここで【小松委員】が「全ての被ばく経路を考慮し、住民の被ばく線量をどうしようとかいった議論の場はどこかで設けられるのか。」と言っているように、外部ひばく線量(除染の基準値)と内部ひばく線量(食品の基準値)について両方検討をしておきながら、両方を併せてどうするかといったことのいついては自分たちで議論するつもりが無いのである。これは科学者としてひどすぎる態度ではないか。

放射線審議会(第118回)
 議事録
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/gijiroku/1314479.htm
 配布資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/shiryo/1313898.htm

厚生労働省はこの件については「私の仕事じゃないので」と念押しするために、放射線審議会に以下の通り資料を提出している。

・放射線審議会(第122回) 平成24年1月12日
 配付資料
 資料第122-4号 :放射線審議会委員からのコメント及び質問への回答(事務局回答分)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/attach/1315038.htm
→環境省は除染の基準として、年間1ミリシーベルトを指定し、厚生労働省は今回食品の基準として年間一ミリシーベルトを指定したが、これは外部ひばくと内部ひばくにそれぞれ1ミリシーベルトを割り当てたというわけではないと文部科学省が説明。

いい加減にこの無責任体制を終わらせるためにも、厚生労働省のパブリックコメントで意見を提出しようではないか。
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by touten2010 | 2012-01-27 21:39 | 食品基準値 | Comments(0)

真面目に考えれば、一般食品の放射性セシウム基準値は50Bq/kgか330Bq/kgのどちらかにすべき

厚生労働省が食品に含まれる放射性物質の基準値について、意見募集を行っているが、その計算の仕方はかなり複雑、用語も専門的で解りにくい。

また、各国の基準値を比較してみても、EUや米国のように一般食品の基準値を現行の日本の基準値より倍以上緩い1,250Bq/kgや1,200Bq/kgに設定している国もあれば、パン・パン製品についてベラルーシは40Bq/kg、ウクライナは20Bq/kgとしているなど、厚生労働省の新基準値案よりも厳しい基準値を設定してい
る国もあり、バラツキが目立つ。

このように放射性物質の基準値については根拠が解りにくいので、どのような意見を出したら良いのか解らないという人も多いだろう。

しかし、基準値を算出する際に、もっとも重要な要素となっている部分は、誰にでも解るような内容であることが解ってきた。

基準値に最も「きいてくる」つまり影響が大きく重要な要素となっている部分は「汚染割合」の想定のおき方である。

「汚染割合」とは、「食べる食品の何割が汚染しているか」という想定である。

つまり、「食べる食品が全体の○○割合以上汚染されていることはない」と決めつけてしまうのが「汚染割合」の想定である。

以下の放射線審議会の議事録を見ていただきたい。

・放射線審議会(第121回) 平成23年12月27日
 配付資料
target="_blank">http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/shiryo/1314708.htm
 議事録
target="_blank">http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/gijiroku/1315028.htm

(議事録抜粋)
【石榑委員】  資料第121-2-3号の6ページの表題に「基準値の食品を摂取し続けた場合の被ばく線量」とある。これは実際そうではなく、50%汚染している場合の計算である。表題どおりに理解すれば線量はほぼ倍となる。誤解を与える表現になっている。
【森口(厚生労働省)】  脚注にあるように、飲料水、乳児用食品、牛乳については汚染割合100%、一般食品は汚染割合50%である。
【石榑委員】  脚注ではなく表題に書くべき。表題だけ見ると基準値である100Bq/kgをずっと食べ続けたらと読めてしまう。この表題は、全て汚染している場合と読める。
 そこで次に50%として算出ということであるが、何を手がかりにして50%汚染していると考えたらいいのか分からない。50%が妥当かどうかということを判断する手がかりが欲しい。
【森口(厚生労働省)】  現在の暫定規制値が50%であることと、我が国のカロリーベースでの食料自給率が40%程度、重量ベースで50%程度であること等を踏まえ、50%で十分安全が担保できるだろうとしている。
【石榑委員】  資料の別冊で初期濃度比や移行係数などの非常に細かい議論をされているが、それらではなく、汚染割合の仮定こそが非常に大きくきいてくる。だから、そこのところの議論を丁寧にしていただかないといけない。
 1つには、暫定規制値で実際に運用がなされたという実績があり、さらに4月まで適用する予定とのことである。暫定規制値が決められた時には、5mSvという数字は確かにあるが、Bq/kgという数値は誘導されたものである。誘導されるまでに、様々な仮定が積み重なり、その結果として500Bq/kgとなっている。
その仮定の妥当性について、事故以降既に9ヶ月が経過し様々なデータがあると思うので、それらを踏まえ、さらにある安全尤度を考慮し、このパーセンテージにするといった議論がなされていれば、それについて考えることができる。その点について、どのような議論がなされているのか。
【森口(厚生労働省)】  従来の食品衛生法の規制値は、最悪ケースを考えているので、常に汚染割合100%で、カドミウム、ヒ素等の化学物質の規制値を考えている。今回、汚染割合を50%としているのは、初めてのことである。

ここで石榑委員が言及している通り、「汚染割合の仮定こそが非常に大きくきいてくる。だから、(国民の間で)そこのところの議論を丁寧にしていただかないといけない。」のである。

以下の第122回の放射線審議会の配布資料には「汚染割合の考え方」が詳しく説明されている。

・放射線審議会(第122回) 1月12日
 配付資料
target="_blank">http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/shiryo/1315032.htm

資料第122-3号 別添1 :汚染割合の考え方 (PDF:130KB)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2012/01/13/1315036_3.pdf
汚染割合50%の算定根拠部分記述
p.1
①国内の流通食品の汚染割合が20~30%程度と算出されること(表参照)、②食品の食料自給率が39%(カロリーベース)と算出されること、③現在の暫定規制値において「年平均濃度とピーク濃度(最高濃度)との比」を50%としていることを踏まえ、今回の基準では安全側をとった仮定として50%という値を採用した。
p.2
食品全体の重量ベースの輸入割合は、食料需給表の各類の総和について、 輸入量(5,471 万トン)と国内消費仕向量(11,022 万トン)の値から、約50%と試算される。

この資料の計算式を見ればわかるが、汚染割合を大きく想定すればするほど基準値は低く厳しくすることになる。

汚染割合を倍に想定すれば、基準値は2分の1に厳しくしなければならない。

例えば、新基準値案の想定である汚染割合50%を仮に100%に訂正したとすると、一般食品の新基準値案は現行の100Bq/kgから50Bq/kgに訂正することになる。


それでは、各国の食品中の放射性物質に関する基準値においては、汚染割合をどのように想定しているのだろうか。

それは昨年の10月31日に薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会に提出された以下の資料で解る。

・平成23年10月31日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会及び薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会・放射性物質対策部会合同会議 資料一覧

target="_blank">http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001tmph.html

○資料5
主な論点と対応の方向

target="_blank">http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001tmph-att/2r9852000001u03j.pdf

この資料のp.5に「海外における食品中の放射性物質に関する基準値の比較」があるので、その資料を見ていただきたい。

各国の基準値と汚染割合の想定は以下のようになっている。

一般食品 放射性セシウム基準値
コーデックス 1,000Bq/kg
EU       1,250Bq/kg
米国     1,200Bq/kg   

ベラルーシ
 パン・パン製品 40Bq/kg
野菜      100Bq/kg
ウクライナ
 パン・パン製品 20Bq/kg
野菜      100Bq/kg

コーデックス 介入レベル1mSv 汚染率 10%
EU       追加の被ばく線量1mSv 汚染割合 10%
米国     預託実行線量 5mSv  汚染割合 30%

食品からのひばく線量の上限値は、米国を除いては1mSvとしており、そう変わらないと思われる(「介入レベル」の意味が良くわからないが「追加の被ばく線量」とだいたい同じ意味だろうと推定した)。

しかし、汚染割合の想定は、10%~30%となっており、今回の新基準値案の50%よりも大幅に低い値となっている。

このように、コーデックスや、EU、米国といった世界の主要国の放射性セシウム基準値が日本の新基準値案より大幅に緩いのは、汚染割合の想定が大きくなっていることが主たる要因である。

例えば、この数値を元に、汚染割合を今回の日本の新基準値案の想定である50%に引き上げた場合の各国の基準値を試算してみよう。

コーデックス 200Bq/kg
EU       250Bq/kg
米国     720Bq/kg

以上のように、汚染割合の想定を今回の日本の新基準値案を同じにすれば、預託実行線量が5mSvとなっており大部高いと思われる(預託実行線量の意味が良く分からないが、「追加の被曝線量」と似たようなものだと推定した)米国を除いては、各国とも今回の日本の新基準値案に大部近づいてくる。

従って、新基準値案の「食品からのひばく線量を年間1mSvに抑える」といったところは、国際的にもかなりコンセンサスのあるところであるように推測されるから、「汚染割合を何%に想定するか」に絞って国民的に議論すれば、新基準値についての国民的合意を形成することができる筈である。

さて、「汚染割合を50%にする」という考え方は、「放射線審議会(第121回)」で「【森口(厚生労働省)】」が言及している通り、「従来の食品衛生法の規制値は、最悪ケースを考えているので、常に汚染割合100%で、カドミウム、ヒ素等の化学物質の規制値を考えている。今回、汚染割合を50%としているのは、初めてのことである。」といった「本邦初の取組である」いった特殊な事情がある。

例えば、「【森口(厚生労働省)】」が放射線審議会で言及したカドミウムについて考えてみよう。

カドミウムは鉱物中や土壌中など、天然に広く存在する重金属であり、いろいろな原因により一部の地域の水田などの土壌に蓄積されている。

「食品に含まれるカドミウム」に関するQ&A(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/12/h1209-1c.html

食品衛生法上米に含まれる基準値0.4 mg/kg以下となっているが、上記のホームページにも記されているとおり、全国調査でこの基準値を上まわる米は全体の0.3%しか存在しない。

このように、全体から見れば、問題がある汚染米が非常に少ない、つまり汚染率が非常に低いカドミウムでも、汚染率100%のケースを想定して基準値が定められているのである。

これから見ると、放射性物質だけ汚染割合を50%と想定するのは、基準値を通常の他の化学物質の倍緩くするということであり、消費者にとっては不安だろう。

一方、国際的な基準であるコーデックスやEU、米国といった国が、汚染割合を10%~30%としているということは、国際的に比較すると日本の新基準値は非常に厳しい(5倍近く厳しい)規制であるので、農家や食品事業社は国際的に比較してより厳しい規制により重い負担を被るといったことになるだろう。

このように、汚染割合については、国際的な想定と同レベルとすれば、他の化学物質についての国内的規制の考え方を大きく逸脱したものとなってしまい、消費者に不安を与えることとなり、逆にこれまでの国内規制の考え方を踏襲して100%とすれば、逆に国際的な想定レベルよりも非常に厳しいものとなって食品事業にとって大きな負担となってしまうというジレンマがあるのである。

したがって、汚染割合については、国際的な想定レベルへ合わせることを重視するにしても、国内規制の考え方の踏襲を重視するにしても、必ず負担を被る者が出てくる訳であるから、充分に国民的議論を行い、国民全体でコンセンサスを作り上げたものとすべきである。

汚染割合は「食品全体のうち何割が汚染されているか」を想定するといったものであるから、考え方は単純である。

例えば、「事故原発周辺の警戒区域や計画的避難区域に近い住民の人たちで、地域の農産物を主に食べている人たちや、福島県民でなくても、福島県を応援するために福島の農産物をいつも食べている人たちなどは、食べている食品の汚染割合は高いだろうから、例え国民全体から見ればごく一部に限られる人たちだとしても、こうした人たちの健康をしっかり守っていく必要がある。従って、汚染割合は日本の食品衛生法上の従来の考え方を踏襲して100%とすべきである。そのためには、検査のコストが大幅に高くなって、国民全体の食品価格が多少高くなっても構わない」と考えるのであれば、一般食品の新基準値は50Bq/kgにすべきである。

また、「実際は福島県内の農産物でさえ放射性物質が検出されている割合はごく一部であり、しかも新基準値の100Bq/kgを大幅に下回っているものばかりなのだから、食品の50%が100Bq/kgまで汚染されるといったことはとうてい想定しえない。想定しえないケースをもとに厳しい基準値を設定して、食品の価格を高騰させ、国民全体の食生活に影響を与えてはいけない。だから、(「重量ベース※の食料自給率(50%)」)×(100Bq/kg以下のものも含めた放射性セシウムが検出される食品の割合(20%~30%))=汚染割合計≒15%とすべきである」と考えれば、一般食品の新基準値は、330Bq/kgとなる。

このような根拠を元に一人でも多くの方に厚生労働省の新基準値についてのパブリックコメントに意見を出していただきたい。締め切りは2月4日(土)必着である。

・乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(食品中の放射性物質に係る基準値の設定)(案)等に関する御意見の募集について 厚生労働省
意見・情報受付開始日 2012年01月06日 意見・情報受付締切日 2012年02月04日 (必着)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495110333&Mode=0

※重量ベースの自給率は以下の食料需給表の平成22年度速報値が用いられている。
・食料需給表
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
平成22年度(概算値)
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/pdf/fbs-
fy22p.pdf


しかし、この数字は分母にも分子にも飼料が含まれており、莫大な量の飼料用輸入穀物が含まれているので、食品の汚染割合を計算するには不適切な数字である。
正しくは、分母と分子から飼料用の作物を除外して計算する必要がある。そうするとだいたい私の試算では50%ではなく58%ぐらいになる。
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by touten2010 | 2012-01-26 23:14 | 全般 | Comments(0)

食品に含まれる放射性物質の基準値に意見を出そう!

厚生労働省が食品に含まれる放射性物質の新しい規制値について案をつくり、1月6日からパブリックコメントにかけてかけ意見を募集している。意見提出の締め切りは2月日。できるだけ多くの人にしっかりこの案を考えて意見を出してもらいたい。
基準地案は(1)一般食品は放射性セシウムの規制値を現状の500Bq/kgから5分の1の100Bq/kgとする。(2)牛乳・乳製品と乳児用食品についてはより厳しい100Bq/kgとする。というのが主な内容。また、お茶については、現状の暫定規制値については、生茶葉、荒茶、製茶、飲む段階のお茶のどの段階で規制値を適用するかについて喧々諤々の議論を巻き起こし、結局は乾燥されて放射性セシウムが最も濃縮された製茶段階でも通常の規制値を適用するという運用となってお茶の流通が大打撃を被り、埼玉県では老舗の製茶会社の倒産を招いている訳だが、新たな基準地では最終段階の抽出されたお茶(液体)で規制値を適用するという案になっており、お茶業界にとっては影響が大幅に緩和された案となっている。

・乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(食品中の放射性物質に係る基準値の設定)(案)等に関する御意見の募集について 厚生労働省
意見・情報受付開始日 2012年01月06日 意見・情報受付締切日 2012年02月04日 (必着)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?

CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495110333&Mode=0


新基準値の考え方を理解するにはパブコメのホームページに掲載されている資料だけではよく解からないこともあり、以下の「厚生労働省等が行っているリスクコミュニケーション」の資料と、新基準値を議論している「放射線審議会(121回以降)」の資料と議事録を読むと様々なことがよく解かるので、是非こちらをごらんになっていただきたい。基準値の厳格化によって負担が強化される農業生産者の方々や食品業界の方々も、厳格化を望んでいる消費者の方々も、論理的で建設的な意見を出して欲しい。

・食品に関するリスクコミュニケーション
~食品中の放射性物質対策に関する説明会~
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-
anzen/iken/120117-1.html

開催結果
<主催> 厚生労働省・内閣府食品安全委員会

資料2 食品中の放射性物質の新たな基準値について
【全体版】
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/120117-1-03-01.pdf

資料4 農業生産現場における対応について
【全体版】
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/120117-1-05-01.pdf

・放射線審議会(第123回)平成24年1月17日
議題
1.「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部を改正する件について(諮問)」に係る検討について
2.「水道法に規定する衛生上必要な措置等に関する水道水中の放射性物質の目標の設定について(諮問)」に係る検討について
3.その他

 配付資料

target="_blank">http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/shiryo/1315183.htm


・放射線審議会(第122回) 平成24年1月12日
 配付資料
 資料第122-4号 :放射線審議会委員からのコメント及び質問への回答(事務局回答分)

target="_blank">http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/attach/1315038.htm
→環境省は除染の基準として、年間1ミリシーベルトを指定し、厚生労働省は今回食品の基準として年間一ミリシーベルトを指定したが、これは外部ひばくと内部ひばくにそれぞれ1ミリシーベルトを割り当てたというわけではないと文部科学省が説明。

・放射線審議会(第121回) 平成23年12月27日
 配付資料

target="_blank">http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/shiryo/1314708.htm

 議事録
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/gijiroku/1315028.htm

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by touten2010 | 2012-01-24 22:22 | 食品基準値 | Comments(0)

福島原発事故の後、全ての日本人が放射能と向き合って暮らすことを運命付けられた。その一人として日々の放射能の情報を整理し、これに向き合う。
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