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放射能に向き合う日々

放射能汚染牛肉が今日も流通しているのはなぜか

9月8日に新潟市で、流通業者の保管する宮崎県産の牛肉から、暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出された。

8月19日に宮崎県産の牛の出荷制限が解除されると同時に、宮崎県産の牛は全て全戸又は全頭検査を受けることになり、放射性セシウムが暫定規制値を上回る牛肉を流通させない体制が整ったはずである。

にもかかわらず、流通している宮崎県産の牛肉から暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出されるのはなぜだろうか?

新潟市のプレスリリースに記されている牛肉の固体識別番号と、宮崎県が2日に公表した資料の個体識別番号を照らし合わせてみると、今回見つかった牛肉は6月6日にとちくされたものであり、とちく場で全戸・全頭検査が行われる体制になった前にとちくされていたものであることが解かる。

 つまり、全戸・全頭検査体制が開始される前にとちくされた、暫定規制値を上回る放射性セシウムに汚染された宮崎県産の牛肉が、流通業者の冷蔵庫にはまだまだあるし、それは今日も売られているのかもしれないのである。

 このような状況では、消費者の牛肉に対する不安が解消されるはずも無い。全戸・全頭検査体制が始まっても、牛肉の値段が上向いてこないのも当然である。

 消費者の不安が解消されるには、
1.全戸・全頭検査により、汚染牛がとちく場より先に流通しないことが確保される。
2.既にとちくされ、流通段階にある牛肉の中に、汚染牛の牛肉が存在しないことが確認される。
という二つの条件が満たされなければならないはずである。

 そして、上記2の条件が満たされるには、現在厚生労働省が各県・自治体の保健所に命じて行わせている、以下の作業が、全ての汚染稲わら給与牛に対して完了することが必要である。

1.放射能に汚染された稲わらを給与された牛の存在を調査し、その牛の個体識別暗号(牛肉のトレーサビリテイシステムのために全ての牛と牛肉に付けられているもの)を公表するとともに、とちく場等流通先の自治体に番号を伝える。

2.流通先の自治体は、流通している牛肉を調査し、放射能検査を行うとともに、更に次の流通先を調査し、次の流通先の自治体に個体識別番号の情報を提供する。放射能汚染が暫定規制値を上回る牛肉については、最後の流通先まで牛肉が保管されているか、消費ずみかを確認する作業を繰り返す。

 しかし、汚染牛牛肉の流通先が膨大で、自治体の保健所の調査作業が完了する目処が全くたっていない。

 しかも、9月2日になっても宮城県のように新たな出荷済み汚染稲わら給与牛が牛が発見され、調査対象の牛肉はどんどん増えているのである。宮崎県産の汚染稲わら給与牛に限れば、7月23日に1,183頭だったものが、2,109頭と1,000頭近くも増えている。

 加えて、ひどいのは、全戸・全頭検査体制への移行に伴い、国も県も流通済みの牛肉の調査・検査状況についての国民への説明について「手抜き」をはじめ、消費者への情報提供がおろそかにされていることである。

 まず厚生労働省だが、流通済み牛肉の調査状況をとりまとめ公表作業を進めることを止めてしまった。下に示す厚生労働省のデータとりまとめホームページサイトの数字は7月下旬以降ほとんど集計が進められておらず、大部分の放射能汚染稲わら給与牛の牛肉については、食品衛生法上の暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出されたものも含めて、集計作業にさえとりかかられておらず、調査が進められているのかどうかさえ良く解からない。

 次に、放射能汚染稲ワラの生産元であり、放射能汚染稲わら給与牛をもっとも多く出荷している。宮城県だが、稲わら汚染牛の調査の状況について説明入りの資料を公表することを7月23日以降行っていない。頭数のみを別資料の中で説明しているだけで、調査がどのような段階にあるのか、どうして汚染稲わら給与牛が次々に見つかって増えていくのか、調査はどのような段階で完了し、「もうこれ以上汚染稲わら給与牛がいる可能性が無い」ということがどのような手順で確定するのか、全く説明が無い。

 以前ブログで予告したが、心配していたとおり、全戸・全頭検査体制への移行とともに、行政・畜産農家における原因究明のインセンテイブが失われ、モラル・ハザードが説明の手抜きという形で、国・自治体から始まっているようだ。

 全戸・全頭検査体制に移行しても、市場に放射能汚染稲わらが給与された牛の牛肉が流通している限り、消費者の牛肉に対する不安が解消することはありえない。国も県も放射能汚染稲わらの流通状況、牛への給与状況、放射能汚染稲わら給与牛の牛肉流通状況を早急に徹底調査し、市場に放射能汚染牛肉が流通する状況を一刻も早く解消するべきである。そしてその進捗状況は国民に対して詳細に随時説明していくべきである。それが行われない限り、国民は牛肉をさけ続けるしかないだろう。

・宮城県内から出荷された家畜に由来する食肉の流通について 新潟市保健所 9月8日→個体識別番号10313-69197
http://www.city.niigata.jp/info/shoku_kanei/syokuei/topics/housya/img/0908.pdf

・事故後稲わら(*3)を給与した牛の個体識別番号について(PDF)2011年9月2日(173頭)宮城県
*3 放射性物質検査が行われていない事故後稲わら
10313-69197と畜日→6月6日
http://www.pref.miyagi.jp/shoku-

k/inawarakyuuyogyuu/20110905更新/inawarautagaiushi173.pdf


・宮城県において飼養されている牛の県外への移動及びと畜場への出荷の制限に係る一部解除について平成23年8月19日 医薬食品局食品安全部
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001ming.html

・特定の農家から出荷された牛の肉の流通調査結果について(第32報)(東京電力福島原子力発電所事故関連)
平成23年8月15日 医薬食品局食品安全部監視安全課
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001m85o.html

・放射性物質が検出された稲わらを給与した肉牛について(H23.7.23、PDFデータ)宮城県→この時点では汚染稲わら給与宮城県産牛1,183頭
http://www.pref.miyagi.jp/tikusanka/0400-

souchishiryou/110723pr1.pdf


・宮城県から出荷された牛の肉の流通状況等について(第32報)(食と暮らしの安全推進課・畜産課)→汚染稲わら給与宮城県産牛2109頭に
http://www.pref.miyagi.jp/press/pdf/110906-8.pdf

・事故後稲わらを給与された牛の個体識別番号について 宮城県
http://www.pref.miyagi.jp/shoku-k/inawarakyuuyogyuu/inawarabeef.htm


・放射性物質の検査結果について(福島県内農家出荷分) 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001jyvq.html

1 浅川町産の牛について 7月14日公表42頭
 東京都調査 販売先も含めとりまとめていたが、7月29日でとりまとめ公表作業ストップ。
 仙台市調査 販売先も含めとりまとめていたが、7月22日でとりまとめ公表作業ストップ。
横浜市調査 販売先も含めとりまとめていたが、7月22日でとりまとめ公表作業ストップ。

2 郡山市、喜多方市及び相馬市産の牛について 7月16日公表84頭
 埼玉県調査 とりまとめ公表作業は7月29日でストップ。なお、資料からは調査が終了しているか否かが解らない書き方になっている。
 東京都調査 販売先も含めとりまとめていたが、7月29日でとりまとめ公表作業ストップ。
 仙台市調査 とりまとめ公表作業は7月29日でストップ。なお、資料からは調査が終了しているか否かが解らない書き方になっている。
 郡山市調査 販売先も含めとりまとめていたが、8月23日でとりまとめ公表作業ストップ。

3 二本松市、本宮市、郡山市、須賀川市、白河市及び会津坂下町 7月18日公表411頭
 群馬県調査 販売先も含めとりまとめていたが、8月10日でとりまとめ公表作業ストップ。 
 埼玉県調査 販売先も含めとりまとめていたが、7月27日でとりまとめ公表作業ストップ。
東京都調査 販売先も含めとりまとめていたが、7月29日でとりまとめ公表作業ストップ。
 西宮市調査 とりまとめ公表作業は9月2日でストップ。なお、資料からは調査が終了しているか否かが解らない書き方になっている。
 郡山市調査 販売先も含めとりまとめていたが、7月27日でとりまとめ公表作業ストップ。

4 白河市及び猪苗代町 7月25日公表28頭 
 郡山市調査 1頭分しかとりまとめ公表作業がされておらず、その分について8月2日でとりまとめ公表作業ストップ。

5 須賀川市、古殿町、石川町及びいわき市 7月30日福島県公表290頭
 郡山市調査 1頭分しかとりまとめ公表作業がされておらず、その分について8月5日でとりまとめ公表作業完了。

6 二本松市、須賀川市、田村市、石川町、古殿町、平田村及び鮫川村 8月6日福島県公表13頭分
 郡山市調査 2頭分しかとりまとめ公表作業がされておらず、その分について8月12日でとりまとめ公表作業完了。

福島県において不適切な飼養管理が確認された農家から出荷された牛の肉の流通状況について
 浪江町 8月21日公表229頭分、5頭分
  販売先についてのとりまとめ公表作業がされていない。

・放射性物質の検査結果について(福島県以外農家出荷分まとめ)厚生労働省 3,778頭分
→出荷先とちく場より先の販売先についてはとりまとめ公表作業がされていない。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001jzem.html



by touten2010 | 2011-09-14 22:14 |

福島原発事故の後、全ての日本人が放射能と向き合って暮らすことを運命付けられた。その一人として日々の放射能の情報を整理し、これに向き合う。
by touten2010

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